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2019年01月29日
チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』
以前から観たいと思っていた演劇カンパニー「チェルフィッチュ」
その舞台『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』 東京公演を体験してきた。
2014年に初演されて世界13カ国を巡った演目『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』が再演出されたソリッドになったバージョンとのこと。
タイトルのビジュアルにもあらわれている通り、コンビニエンスストアの過剰さや空虚を描く作品。
舞台は住宅街にあるコンビニ。登場人物は、店長、2人の男性バイト、SV(本部から派遣されるスーパーバイザー)、新人バイト女性の水谷さん、ちょっと変なクレーマー客、そして毎晩アイスを買っていく女性客の7人。
バイト同士のやりとりや、SVからのパワハラや、変なクレーマーの対応など、コンビニでいかにもありそうな些細な出来事がコミカルに描かれる。
特徴の一つが、台詞に含まれるノイズ。
「あ、ていうか、、、あの〜よくあるじゃないですかぁ。文章みたいに主語とか述語とか、、、そういうのって、しゃべってる時には結構ばらばらっていうか、、、、まあ、言葉の順番っていうか、SVOCでしたっけ?、例えばそんなことはそんなに考えないでしゃべってるけど意味は通じるっていうか、、、」
というような(あまり上手く表現できないっ)、実際の会話には当たり前に含まれる文脈の乱れ(=ノイズ)が多用され、それが不思議なリアリティをもたらすのだ。
でそれに加えて、動きと音。
役者は、台詞とはほぼ関係のない、でも時に微妙にリンクしたり、時にまったく逆方向だったりする、ダンスともジェスチャとも運動とも何とも言えない謎な振付で動きながら、そのノイズまみれのリアルな台詞を話す。しかも全編通じてキース ジャレットによるバッハの「平均律クラヴィーア」と同期しながら。
音楽のシリアスさが相まって、笑いを誘う。
なんかくせになってしまいそうな、変な動きと妙にリアルな台詞。
コンビニに代表される消費社会や労働への風刺と愛憎がごちゃ混ぜになり、どこか特定の立場に感情移入するというよりも、その全体的な「ばかばかしさ」によって、観る者を超越的な視点(それは神か、あるいはコンビニか、、)に立たせる。
ここには、体験することでしか味わえない面白さがある。
終演後にはチェルフィッチュ主宰の岡田利規さんと、「コンビニ人間」の作者である小説家 村田沙耶香さんのトークも。
村田さんのコンビニ体験話からにじみ出てくるコンビニ愛にほっこりする時間。
帰り道にコンビニに寄ったことは言うまでもない。
(2019年2月3日まで三軒茶屋のシアタートラムにて上演中)
by iidamasaharu